能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

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2016年1月25日月曜日

映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転/The Big Short』(2015):こんな話、わかるわけがない




 
 
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The Big Short2015年)/米/カラー
130分/監督:Adam McKay
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というわけで、また2月の映画賞取り競争にノミネートされた映画を見る。今回は金融関係のお話。これも実話を元に映画化。クリスチャン・ベール、スティーヴ・カレルにライアン・ゴスリング、ブラッド・ピット…とハリウッドの大スター達を揃えました。
 
「またウォール・ストリートで派手な男達が派手に金儲けをするお話…?」こういう話にあまり興味のないワタクシの最初の予想はそんな感じ。なんだか難しそうですね…という印象。
 
それでも賞取り競争で話題なら見ておくか…と鑑賞。事前に、金融に詳しい旦那Aが簡単なレクチャーをしてくれる。やっぱりよくわからない。まあいいや…見た後で質問をすればいいやと思う。
 
 
さて結果は

わからなかったです。

いや…何があったかぐらいはわかりますよ。海亀はアメリカに2008年から住んで不動産・金融関連のニュースも見ていたし、当時の状況はそれなりに理解していたつもり。しかしこの話の要⇒スター俳優達のキャラがどうやって金儲けをしたのかのカラクリが全くわからなかった…。要はこの話の中の金融取引「クレジット・デフォルト・スワップ/CDS」というやつが、(私には)あまりにも荒唐無稽すぎて全く理解することが出来なかった。
 
んなわけで…映画の後で2時間ほど旦那A先生を質問攻め。ケンケンゴウゴウ大論争。
 
何それ?金融業界にはそんなバカな話がまかり通っているの?冗談じゃねーっ!

…で2時間後、何とか納得できたのかなぁ。やっぱり金融関連はわからんね。変な世界。(金融取引の解説は後述)


しかしこれ誰にでも面白い映画なんですかね? 映画のとしての脚本、リズム、構成、俳優の演技、それにドラマチックな話の展開など…映画作品としてはかなりいい映画なんですよ。たぶん。ところが肝心要の取引の内容が全くわからなかったので、それが気になって映画そのものを楽しめなかった。

ちょっと心配になったので、ネット上に出回っている日本での3月の封切りに向けての情報を見てみたんですけど、キャッチコピーが「これがリーマンショックの真実だ!ブラッド・ピット、クリスチャン・ベールらダサカッコいいアウトロー軍団がウォール街に倍返し!」とか「最高にエキサイティングな大勝負!」…何それ? だいたい「華麗なる大逆転」って何? そんな軽い話じゃないですよこの映画。

俳優達が派手なので、それだけでこの映画を見に行っちゃう人は多いと思うけど、そういう類の映画じゃないと思う(俳優達を見て楽しむのはそれでいいですけど)。

一見デカプリオ君の「ウルフ・オブ・ウォールストリート(2013)」のような映画に見えるんだけど、この映画は全く違います。これはアメリカ人及び、アメリカ社会に対して、過去の失敗への大反省を促す問題提示系の映画。かなり深刻な話。ドカドカ金儲けして毎日シャンパン風呂にハダカの女…なんていう話ではないです。全然違う。全編、いかにアメリカの住宅ローンが腐っていたのか、そこに食い込んで誰がどう儲けを出すのか…と全く色気のない話ばかり。大体こんな話、平均的な日本人に理解できるのか…。え わからないの私だけ?

というわけで、もやもやと全編にわたり「この人達は何で金儲けしてるの?何に投資してるの?儲けたのはわかるけど、そのお金は誰が払ったのよ?」などなど頭をひねりながら鑑賞。あまり楽しめなかった。あ…ワタクシ、金融関連に無知な上にこの映画は専門用語の英語も難しいんですわ…。まあしょうがないやねこれは…。


というわけで、この映画の金融商品取引のおおまかな解説。だいたいこのようなもの。
ネタバレ注意

●この映画の背景
時は2005年。アメリカは住宅バブル。家の値段は日々上昇を続ける。家が低所得層にも飛ぶように売れている。不動産屋は甘い言葉で客を誘い込み低所得者層にも高額の家を売りつける。もちろん客は全員住宅ローンを組む。皆返済が出来ると仮定してどんどん売る買う。実際は最初から無理のあるローンをを組んでいるので返済が可能なのかあやしい。それでも時はバブル。誰も気にしない。

●「クレジット・デフォルト・スワップ/CDS」とは
さて金融業界。変人ヘッジファンド・マネジャー、クリスチャン・ベールは上記の住宅ローンの(近い将来の)破綻を予測。それを使って利益を得ることを思いつく。(破綻するであろう)住宅ローンに保険を掛けたら…?
銀行は個々の住宅ローンを集め、それを商品化(CDO)。それに対して保険をかける…それがCDS。(本当は別の意味があるけれど省略)。クリスチャン・ベールはアイデアを大手銀行に持ち込む。銀行は承諾。
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買い手(クリスチャンベール)は、定期的に保証金(保険料)/プレミアムを売り手に支払うことで「住宅ローンが破綻」した場合の損失相当額を受け取る権利(プロテクション)を売り手から買い取る。
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売り手(銀行などの投資家)は保証金/プレミアムを買い手から定期的に受け取るが、「住宅ローンが破綻」した場合はその契約の全額(損失相当額)買い手に支払うことになる。
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2008年市場が破綻して、この映画の人物達(買い手)は巨額の利益を得る。

この映画は、世間が「住宅ローンが破綻することはない」と見ていたのに対し、クリスチャン・ベール、スティーブ・カレル、若い二人組みの投資家達が買い手として、「住宅ローンはいずれ破綻する」と見込んで賭けに乗ったというお話。人の死亡を見込んで生命保険をかけるのと一緒。買い手の契約した金額が何億ドル単位の取引だったので、住宅ローン市場が破綻した際、非常に高額の利益を得た。

しかしこんな話わかるわけがないですよ。全然わからなかった。この映画を見て内容を全部理解できて面白かったって言っている人は、金融関係のプロか、その道に詳しい人か、ただ嘘をついているだけとしか思えない。


クリスチャン・ベールは変人天才ヘッジファンド・マネジャー兼社長。別会社のヘッジファンド・マネジャーのスティーブ・カレルは怒り悩む人…儲けを出しながらもそのマネー・ゲームの不正と巨大さに悩む。観客はこの人と一緒に驚いたり悩んだりする。二人の若い投資家を助けるブラッド・ピットは常識人。彼は伝説のトレーダーなんだけど、マネーゲームの汚さに愛想を尽かしリタイア中。それぞれの人物が皆いわくつき。「全員大儲けしてウハウハハッピー」な映画ではない。その辺りにこの映画の良心を見る。

儲けたものは凄いけど、酷い話だよね…という映画。

専門用語満載、複雑で深刻な内容ながらも、「世界金融危機」の発端となった「米・住宅バブル崩壊」を可能な限り詳細にわかりやすく正確に描いた映画として各界で高評価。真面目な映画として評価されています。コメディと言われている部分は私にはよくわからなかった。