2016年1月29日金曜日

David Bowie – Stay (1976) ライブ盤話



マニアックな話を。



David Bowie – Stay (1976)
Live Nassau Coliseum '76


Album:  Station To Station (Deluxe Edition)
Released: 1976 ℗ 2010 The copyright in this sound recording
 is owned by Jones/Tintoretto Entertainment Company LLC
under exclusive licence to Parlophone Records Ltd




さていつまでBowieさんネタで引っ張るか…。世の中色々と忙しいんで、もうBowieさん関連のニュースも薄くなってきたように思うけれど、もう少し引っ張ろう。海亀は一時期彼の薄いファンだっただけなので、たぶんBowieさんのアルバムレビューは書けません。それほど詳しくはない。世の中、コアなBowie先生のファンはごまんといらっしゃる…。じゃあ好きな曲のことを書こう。

さて「STAY」です。アルバムは『Station to Station』。リリースは1976年。キャラは「Thin white duke」だそうで、ルックスもスタイリッシュな時期に入るんですが、まーそんなことはどうでもいい。

このアルバムが出た頃は、Bowieさんがアメリカで薬に溺れていた状態から「そろそろヨーロッパに帰ろうかな」と思っていた時期だそうです。アルバムの曲はたった6曲。その中で一番いい曲。傑作です。

元曲もいいんですけど、この曲はライブが一番。それも元々ブート盤で出回っていたLive Nassau Coliseum ‘76 。これは色々と思い出があるのでそのことを書く。


最初にこのライブ盤に出会ったのは1983年。友人がこのブートのLPレコード盤を持っていた。2枚組み。音はたぶんモノラル。このライブがそれ以前に聴いたどの公式ライブアルバムよりも良くて本当によく聴いた。

その後15年後ぐらいに、これと全く同じブートのCDを新宿で発見。イタリア製。セットリストはLP盤と同じ。これも残念ながらモノラルでした。しかしCDの現物が手に入ったので大喜び。このCDと前述のレコードは12曲収録。特にPanic In Detroit」のドラムソロは絶品。

さてその後2010年。このライブが公式にリリースされることになる。アルバム『Station to Station』のデラックス・エディションとして、元アルバムのリマスター盤にこのライブのフルセットがおまけでついてくることになった。もちろんステレオ。なんとライブの音源は15です。うひゃあ~これは買わねばならぬ。

2010年に出たときには全く知らなかったので、2014年にこのことを知った時にはCDは売り切れていて、アマゾンのマーケットプレイスで買うしかなかった。それでも手に入れましたよ。このライブは最高のセットリスト。Bowie先生絶好調。


難点が一つ。この公式で出たライブはPanic In Detroit」のドラムソロがカットされてました!うわあああなんでや一番盛り上がるところなのに…。レコード会社の奴等は解かっとらんなー…まったく。

…と思っていたら、ドラムソロのの入った
Panic In Detroit [Unedited Alternate Mix]  13:08
というものがあることを今発見。なんとPanic In Detroit のフルVer.iTunesで売られていますぜ。

iTunesではCDと同じセットの最後に、このPanic In Detroit のフルVer.が売られてます。個別に売らずにAlbum Onlyということなので、このドラムソロが欲しければ、iTunesでアルバムの全曲買えということらしい。チクショー!金儲けしやがって…。まあいいや。たった今知った情報なのでこれから買うかどうしようか考えよう。


それはともかく、もし最高のBowieさんのライブを聴きたいならこのLive Nassau Coliseum ‘76です。私的にはこれ以上のものはありえない。セットが最高。音は決して美しくはないです。綺麗に音がわかれていなくて全体にベタっとしている。それぞれの楽器が大きな音でぎゅうぎゅうに詰まってます。曲の間の観客の歓声も大きい。

でも実際のライブってそんな感じですよね。なんだかやたら音が大きくてうるさくて騒がしい。洗練されていなくて暴力的にうるさい。でもその場の興奮はよく伝わってくると思います。普段は自意識過剰気味なのがちょっと気になるBowie先生も、このライブはノリノリ絶好調。楽しそうです。ミュージシャン達もキレそうになりながらギャンギャンに弾きまくってます。このバンド最高・最強です。

同じ「STAY」を、別のライブアルバムSTAGE (1978)のものと今聴き比べてみたら、ベースの音が大きくてアレンジが違いますね。Youtubeに出ている1990年(エイドリアン・ブリューがうるさい)の「STAY」や、それ以降のものは別物、論外。私は76年のこの「STAY」が一番いいと思う。Bowieさんも29歳で若いしバックのファンクバンドが最高。バンドとしてもこの頃が旬でしょう。

Bowieさん絶好調・最高のライブアルバムとしてお勧めです。


メンバーは------------
David Bowie - Vocal
Carlos Alomar - Guitar
Stacy Heydon - Guitar
George Murray - Bass
Tony Kaye - Keyboard
Dennis Davis - Drums
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セットリスト
Live Nassau Coliseum ‘76 Uniondale, NY
ISOLAR TOUR
1 Station to Station
2 Suffragette City
3 Fame
4 Word On a Wing
5 Stay
6 I'm Waiting for the Man
7 Queen Bitch
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1 Life On Mars?  
2 Five Years
3 Panic In Detroit
4 Changes
5 TVC 15
6 Diamond Dogs
7 Rebel Rebel  
8 The Jean Genie  
9 Panic In Detroit [Unedited Alternate Mix] 13:08  ←これフルiTunes
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2016年1月26日火曜日

NHK大河ドラマ「真田丸」第3回「策略」 1月24日放送



さてサナダマール3回目どう?

面白くなってきた。ドラマとして面白い。これはいけます。この回で「この大河は昔のドラマみたいに落ち着いて見られるな」と思いました。ドラマに流れる基本の思想が今回で見えた。これなら大丈夫。

だって今までね、ここ近年脚本なのか演出なのか…ドラマに流れる思想があまりにもモダンすぎて、浅すぎて、いや思想が存在しなかったりして、全く落ち着いて見ていられない大河が多かったんですよ。

思想があったのは『八重の桜』の前半。あのドラマは鶴ヶ城が落ちるまでは、話に一定の思想がありました。だからあのドラマの前半は落ち着いて見れた。

じゃあ思想思想って何?「ドラマで何を見せたいのか、通す筋があるのか」ということ。基本の思想の筋が通ってさえいれば、ストーリー上の多少の脱線は許される。コメディやお遊びもOK.いい大河とはそういうものだと思います。


今回一番強調されていたのは「長男を立てる…ヒエラルキーを守る」ということ。要は「家」を守る為に家族の中の上下がはっきりしている。秩序が乱れないように順番を守る。ボスは誰かをはっきりさせるということ。それが今回の主題。

実際にはこういう「長男第一」なルールって、本当は江戸時代に出来た思想だろうと思うんですけど、これ昭和の価値観でもあるんですよ。だから私の世代には非常に落ち着ける話。今回(草刈)昌幸パパの弟の叔父さんと信繁の会話や(大泉)お兄ちゃんの話に、そのテーマが繰り返し出てきました。今日のタイトルは「策略」なんだけど、裏タイトルは「長男」です。

その台詞を抜粋。
(草刈)昌幸パパの叔父・矢沢頼綱「一族の棟梁であるそなたに従うのみ。」
軍議が始まっても弟の(堺)信繁は「私は呼ばれていない。次男坊とはそういうものだ。」
信尹叔父さんと信繁の会話 
信尹「兄上が覚悟を持って決めたこと。わしはあの人の手足となり、あの人の思いをかなえるだけじゃ。」
信繁「叔父上はいつも父上の影におられます。叔父上は私の鑑(かがみ)とするお方です。私も兄上にとってそんな弟でありたいと思います。」
そして信長に会う昌幸パパが、家に残る長男信幸へ
「お前は嫡男だ。お前を残すのはもしものため、わしらに何かあった時はお前が真田を率いていくのじゃ。あとは託したぞ源三郎」
棟梁、長男、嫡男、次男坊…こういう家族内の序列を表す言葉が何度も出てくる。

こういう言葉で、真田が真田の家を守る為にどういう思想をもっているのか…というのがはっきりと見えますね。これから1年後、このドラマの最後は信幸が残って信繁が死ぬわけなんだけど、この回の「長男を立てる」が後で活きてくるんだろうと思います。きっと私は泣くと思う。


要は「家を守る」という思想。「家」さえ守れば時代を生き残っていける。この思想は戦国の世にもあったし、江戸時代、明治、大正、昭和と続いてきた思想なんですよ。武家とはそういうものだった。これが日本の歴史の中で初めて壊れ始めたのが…40年ぐらい前なんだろうと思う。今は本当に壊れてしまって影も形もない。だから2016年にこういう事柄が大河ドラマで描かれるのは本当に嬉しい。このドラマに昔の大河ドラマの匂いがするのはそのあたりなんだろうと思います。大河ドラマはこういうことの筋さえ通っていればいい。

そうなのよ。なにがなんでも「家」を存続させる。長男を立てる。嫡男優先。男子優先。目上の人を敬う。上司の命令は絶対。結婚は個人の感情よりも家と家の繋がりが重視される。女は政治の駒。女は男子を生んでこそ…こういう昔のルールが大河ドラマに描かれるとほっとする。


というわけで今日は(大泉)お兄ちゃんが主役でした。よかったです。もうお兄ちゃん応援しますよ。真正直で実直。融通が利かない。機転も利かないのかなぁ…真面目すぎて人として面白い人ではないですよね。ものすごく不器用。だけどいい人で誠実なのね。それに比べて弟は利巧で柔軟で要領がいい。こういう兄弟は今でもよくいるでしょう?

信幸といえばつい渡瀬恒彦さんと比べてしまうんだけど、この(大泉)お兄ちゃんはこれでいい。不器用で真面目なお兄ちゃんが成長して、後に立派な真田の棟梁になっていくのを見たら私は泣くと思う。がんばれよぉ。

 
この兄弟の描き方を見ても、家康のキョドり具合を見ても、このドラマは普通の人達を描こうとしてますよね。みんな普通の人。最初からスターじゃない。今現在の家康なんて小物じゃないですか。紋切り型のキャラ設定ではなく、それなりにリアルな普通の人達なんですよ。だからキャラに感情移入しやすいし人のドラマとして面白い。

それからもう一つ。このドラマは全体の雰囲気は一見軽いんだけれど、時代の厳しさもちゃんと描かれてます。
(草笛)お婆ちゃんの小山田茂誠に対しての言葉「(彼は)死んでますね。生きていたとしても小山田一族は裏切り者。ここへ戻ってこられるわけはありません」。
(草刈)昌幸「人は皆おのれの欲のために動くのじゃ」
逃げてきた姉の夫・小山田茂誠を見た信幸は彼をその場で斬ろうとする。
村の民は戦で自分達の森が荒れれば、隣村に盗みに来る。
高遠城では敵の自害の後も生々しい。
こういう場面でピリッとスパイスを利かせてくれれば、何も毎回刀を振り回して血糊まみれにならなくてもいいんですよ。言葉だけでも戦国って厳しいなと思える。

その他気になったこと
長澤まさみさんはあちゃ~これはいかん。現代語のはねっかえり?たぶんまだ134歳ぐらいの設定だからなんですかね。でも女優さんは大人だから正直うざいですね。(黒木華)梅ちゃんのほうが可愛い…力持ち。さて斬られなかった佐助の血はどうして出たのだ?(木村)お姉ちゃんの現代語もちとうざいの。信幸の病弱な奥さんは小松殿じゃないのね…誰? 信長は綺麗好きだそうだ…納得。家康さんは本多忠勝さんがケムたいの?

次回も楽しみですね。



2016年1月25日月曜日

映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転/The Big Short』(2015):こんな話、わかるわけがない




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The Big Short2015年)/米/カラー
130分/監督:Adam McKay
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というわけで、また2月の映画賞取り競争にノミネートされた映画を見る。今回は金融関係のお話。これも実話を元に映画化。クリスチャン・ベール、スティーヴ・カレルにライアン・ゴスリング、ブラッド・ピット…とハリウッドの大スター達を揃えました。
 
「またウォール・ストリートで派手な男達が派手に金儲けをするお話…?」こういう話にあまり興味のないワタクシの最初の予想はそんな感じ。なんだか難しそうですね…という印象。
 
それでも賞取り競争で話題なら見ておくか…と鑑賞。事前に、金融に詳しい旦那Aが簡単なレクチャーをしてくれる。やっぱりよくわからない。まあいいや…見た後で質問をすればいいやと思う。
 
 
さて結果は

わからなかったです。

いや…何があったかぐらいはわかりますよ。海亀はアメリカに2008年から住んで不動産・金融関連のニュースも見ていたし、当時の状況はそれなりに理解していたつもり。しかしこの話の要⇒スター俳優達のキャラがどうやって金儲けをしたのかのカラクリが全くわからなかった…。要はこの話の中の金融取引「クレジット・デフォルト・スワップ/CDS」というやつが、(私には)あまりにも荒唐無稽すぎて全く理解することが出来なかった。
 
んなわけで…映画の後で2時間ほど旦那A先生を質問攻め。ケンケンゴウゴウ大論争。
 
何それ?金融業界にはそんなバカな話がまかり通っているの?冗談じゃねーっ!

…で2時間後、何とか納得できたのかなぁ。やっぱり金融関連はわからんね。変な世界。(金融取引の解説は後述)


しかしこれ誰にでも面白い映画なんですかね? 映画のとしての脚本、リズム、構成、俳優の演技、それにドラマチックな話の展開など…映画作品としてはかなりいい映画なんですよ。たぶん。ところが肝心要の取引の内容が全くわからなかったので、それが気になって映画そのものを楽しめなかった。

ちょっと心配になったので、ネット上に出回っている日本での3月の封切りに向けての情報を見てみたんですけど、キャッチコピーが「これがリーマンショックの真実だ!ブラッド・ピット、クリスチャン・ベールらダサカッコいいアウトロー軍団がウォール街に倍返し!」とか「最高にエキサイティングな大勝負!」…何それ? だいたい「華麗なる大逆転」って何? そんな軽い話じゃないですよこの映画。

俳優達が派手なので、それだけでこの映画を見に行っちゃう人は多いと思うけど、そういう類の映画じゃないと思う(俳優達を見て楽しむのはそれでいいですけど)。

一見デカプリオ君の「ウルフ・オブ・ウォールストリート(2013)」のような映画に見えるんだけど、この映画は全く違います。これはアメリカ人及び、アメリカ社会に対して、過去の失敗への大反省を促す問題提示系の映画。かなり深刻な話。ドカドカ金儲けして毎日シャンパン風呂にハダカの女…なんていう話ではないです。全然違う。全編、いかにアメリカの住宅ローンが腐っていたのか、そこに食い込んで誰がどう儲けを出すのか…と全く色気のない話ばかり。大体こんな話、平均的な日本人に理解できるのか…。え わからないの私だけ?

というわけで、もやもやと全編にわたり「この人達は何で金儲けしてるの?何に投資してるの?儲けたのはわかるけど、そのお金は誰が払ったのよ?」などなど頭をひねりながら鑑賞。あまり楽しめなかった。あ…ワタクシ、金融関連に無知な上にこの映画は専門用語の英語も難しいんですわ…。まあしょうがないやねこれは…。


というわけで、この映画の金融商品取引のおおまかな解説。だいたいこのようなもの。
ネタバレ注意

●この映画の背景
時は2005年。アメリカは住宅バブル。家の値段は日々上昇を続ける。家が低所得層にも飛ぶように売れている。不動産屋は甘い言葉で客を誘い込み低所得者層にも高額の家を売りつける。もちろん客は全員住宅ローンを組む。皆返済が出来ると仮定してどんどん売る買う。実際は最初から無理のあるローンをを組んでいるので返済が可能なのかあやしい。それでも時はバブル。誰も気にしない。

●「クレジット・デフォルト・スワップ/CDS」とは
さて金融業界。変人ヘッジファンド・マネジャー、クリスチャン・ベールは上記の住宅ローンの(近い将来の)破綻を予測。それを使って利益を得ることを思いつく。(破綻するであろう)住宅ローンに保険を掛けたら…?
銀行は個々の住宅ローンを集め、それを商品化(CDO)。それに対して保険をかける…それがCDS。(本当は別の意味があるけれど省略)。クリスチャン・ベールはアイデアを大手銀行に持ち込む。銀行は承諾。
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買い手(クリスチャンベール)は、定期的に保証金(保険料)/プレミアムを売り手に支払うことで「住宅ローンが破綻」した場合の損失相当額を受け取る権利(プロテクション)を売り手から買い取る。
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売り手(銀行などの投資家)は保証金/プレミアムを買い手から定期的に受け取るが、「住宅ローンが破綻」した場合はその契約の全額(損失相当額)買い手に支払うことになる。
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2008年市場が破綻して、この映画の人物達(買い手)は巨額の利益を得る。

この映画は、世間が「住宅ローンが破綻することはない」と見ていたのに対し、クリスチャン・ベール、スティーブ・カレル、若い二人組みの投資家達が買い手として、「住宅ローンはいずれ破綻する」と見込んで賭けに乗ったというお話。人の死亡を見込んで生命保険をかけるのと一緒。買い手の契約した金額が何億ドル単位の取引だったので、住宅ローン市場が破綻した際、非常に高額の利益を得た。

しかしこんな話わかるわけがないですよ。全然わからなかった。この映画を見て内容を全部理解できて面白かったって言っている人は、金融関係のプロか、その道に詳しい人か、ただ嘘をついているだけとしか思えない。


クリスチャン・ベールは変人天才ヘッジファンド・マネジャー兼社長。別会社のヘッジファンド・マネジャーのスティーブ・カレルは怒り悩む人…儲けを出しながらもそのマネー・ゲームの不正と巨大さに悩む。観客はこの人と一緒に驚いたり悩んだりする。二人の若い投資家を助けるブラッド・ピットは常識人。彼は伝説のトレーダーなんだけど、マネーゲームの汚さに愛想を尽かしリタイア中。それぞれの人物が皆いわくつき。「全員大儲けしてウハウハハッピー」な映画ではない。その辺りにこの映画の良心を見る。

儲けたものは凄いけど、酷い話だよね…という映画。

専門用語満載、複雑で深刻な内容ながらも、「世界金融危機」の発端となった「米・住宅バブル崩壊」を可能な限り詳細にわかりやすく正確に描いた映画として各界で高評価。真面目な映画として評価されています。コメディと言われている部分は私にはよくわからなかった。