能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

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2018年2月21日水曜日

お猫様H:初めてのお泊り






先週1週間ほど日本に帰ってきた。猫Hさんと暮らし始めてから家を空けるのは今回が初めてだ。日本に帰るのは4年ぶりになる。飛行機のチケットもホテルも去年の10月の終わりまでには全て手配を済ませた。人間が旅立つ準備はできた。

さて猫Hさんをどうする?


数年前から何度か調べて、近所の猫専門病院の宿泊施設を使うことは決めていた。猫の病院が猫専用のペットホテルをやってくれている。専門のお医者さんが常にいてくださるのなら何があっても安心だろう。普段かかりつけのお医者さんにもそこを勧められた。

自宅でペットシッターにお願いするという方法もある。しかしそもそもうちの猫Hさんは超人見知り…シッターさんが来てくださっても猫Hさんが人前に出てくることはまずない(健康の状態も見てもらえない)。そのうえ彼女は大変な寂しがりや…週末に人間が外出しただけでもご飯を食べずにうずくまったまま人の帰りを待っていたりする…そんな猫さんだから、家に1匹置き去りにするよりも毎日誰かに側にいてもらう環境の方がいいだろうと思った。


今年の1月に病院で健康診断をしてもらう。そして宿泊施設の下見。大きな部屋に真っ白で清潔な大きな箱がいくつも並んでいる。前面だけが檻で扉のように開く箱。全ての箱は窓の方向を向いているので猫達が檻越しに顔を合わせることもない。1匹の猫には(小さな出入り口で繋がった)2つの部屋(箱)がもらえる。猫が望むなら箱の外に出ておもちゃやキャットタワーで遊ぶことも出来るらしい。使い慣れたタオルや毛布、おもちゃ、お皿などを持っていけば少しは馴染んでくれるだろうか。

出発の数日前からHさんには事情を話して聞かせた。「これから1週間日本の家族に会ってきます。もう4年も会っていないからどうしても行かなくてはいけない。Hちゃんはホテルで待っててね。辛い思いをさせると思うけれどごめんね。6つ夜を数えたら7日目の朝に必ず迎えにいくから。着いたらすぐに迎えに行く。みんな優しいから大丈夫。皆かわいがってくれるからね。大丈夫だよ。ごめんね。」

出発の日が来るまで1週間ほど、Hさんのことが心配で心配で心が苦しくなる。


そして私達が旅立つ前日の午後、Hさんを連れて病院を訪ねる。箱にタオルや毛布を入れぬいぐるみを入れる。Hさんは驚いている。箱に入れられても何が起こっているのか分からない様子だ。さっきまで移動の車の中で「出して」と人間臭い表情で訴えかけていたHさんの顔が、怯える小動物の顔に変わっている。ナースの方は大変優しい方。ここなら、ここなら間違いない。この方にお願いすればきっと大丈夫。

病院から帰る車では夫婦共に無言。その夜の食卓で旦那Aに「ご飯が食べられないかもね。怖がってたね」と話すと、彼の顔がみるみる赤く染まる。大粒の涙が両目から3粒ほどこぼれ落ちた「可哀想で…」「…大丈夫よ。皆猫が好きな優しい方々よ。かわいがってもらえる。お医者さんがいれば安心…」自分を納得させるように事実を話し続ける。きっと大丈夫。きっと大丈夫。


1週間が過ぎて、帰宅したのは月曜の午前中。家に荷物を下ろしてそのまま車に飛び乗って迎えに行く。

受付で迎えに来た事を告げると、すぐにナースの方が出てきて説明をして下さる。予想通りHさんは怖がって暫くご飯を食べなかったらしい。食欲を出すためのお薬も少しもらったそうだ。ほんの少し体重も減ったらしい。

キャリアボックスに入って連れられてきたHさんはこちらを見て鳴いている。声に力が無い。「おうちに帰ろう。」


車の中で訴えるように鳴くHさんに話しかけながら家に帰る。家に入ってキャリアボックスのドアを開けると、Hさんはすぐに出てきた。落ち着かない様子。ひっきりなしにか細い声で「やーん、やーん」と鳴いている。こちらを見て訴えかけている。「ごめんね。もうどこにもいかない。ずっと一緒だよ。本当にごめんね。」

Hさんはまず家中をパトロール。部屋の一つ一つを訪ねて匂いを嗅ぎまわる。勝手にどんどん進んでいくのだけれど、人の姿が見えなくなると大きな声で人を呼ぶ。見に行くとまた訴えかけてくる。「大丈夫。ここにいるよ。次はどっちに行こうか。こっちがいい?お水飲む?」

そうやってHさんの後を追って家中を歩く。彼女はどんどん歩いていく。バスルームのシンクの水道から流れるお水を飲んだらすぐに部屋から出て行き、人がタオルで手を拭いている間に階下に下り、また人の姿が見えないと「やーん、やーん」と鳴き始める。「…ここにいるよ。ここにいる。」人が近づいてくるのを確かめると、また先を歩き、窓辺に寄っていって外を眺め始める「窓をあけようか…」
 
その日Hさんは、数時間そのように家中を人と一緒にパトロールし、ソファーに横になった私のお腹の上に乗って一緒に昼寝。テーブルで夕食をとり始めた人間二人を見上げると、すぐに隣の椅子にのぼって横で寝る。食後リビングに移動すれば、人間2人の間にぴたりと挟まれて寝る。始終人間のそばにぴたりとくっ付いて離れない。夜は人と一緒にベッドの上に上って眠り始めた…ここのところ1年以上ベッドでは一緒に眠らなかったのに。
 
 
3日が過ぎて、Hさんはなんとか落ち着いたように見える。一日中人にぴたりとくっ付いているのはまだまだ不安だからなのだろう。毎日一日中眠っているのは、おそらく病院でよく眠れなかったからだろうと思う。
 
眠っている時も時々声をかけ、頭や背中に手を当てる。耳を近づけるとHさんは喉を鳴らし「キュルキュル」と微かに鳴く。もう大丈夫。もうどこにも行かないから。本当にごめんね。ずっと一緒にいるから。