能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

この度の能登半島地震で 被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。 一日も早い復興をお祈りいたします。 ★NHK による様々な支援情報 能登半島地震 義援金・支援金の受け付け始まる 窓口まとめ 【随時更新】 https://www.nhk.or.jp/shutoken/ne...

2018年4月9日月曜日

NHK大河ドラマ「西郷どん」第10回「篤姫はどこへ」 3月11日放送



★あらすじ
遊郭でヒー様と医者に会う。篤姫失踪…海で泣いていた。篤姫の嫁ぎ先は徳川将軍家。幾島は嫁入り準備の先生。遊郭で会った医者・橋本左内が西郷を尋ねてくる。衆議一致制…現将軍は身体の調子が悪い…ヒー様を将軍に…などなどいろいろと聞かされるけれど西郷どんは何も知らず左内にあきれられる。島津の殿に質問。斉彬「お篤は不幸になる」。




そろそろ西郷どんが「だいじょうぶか?」と思い始めたぞ。この子はなーんだか…ちょっとアホかいな?いい人で一生懸命なのはわかるけれど…なんだか何にもわかってないっぽいぞ。

演技もリアクション芸のように「あっ!えええっ?えっ!?」ばかり言ってる。いつもびっくりしてる。無邪気なにこにこ笑顔。そしてすぐ泣く。感情だだ漏れ。子供? 監督の指示なのか、鈴木さんの演技なのか…どーもこの西郷どんは幼すぎて心配だわ。威厳も知性もないもんね。もっとしっかりしたまえ。

演出か脚本のせいなのか…、江戸時代のリアリティもないですね。遊郭で誰もが普通にこんにちは。お得意様のプライバシーは? お姫様が逃げ出す?姫が「ちちうえ~っ!」と海で泣き叫ぶとはまぁハシタナイ。幾島は妙なコント。またまた春画ネタ。西郷どんはいつも庭にぼーっと突っ立って「えっ?」ばかり言ってる。全体にもっとビシッとしろっ!😩


2018年4月5日木曜日

英国人気質とは?『The Daily Mirror/デイリー・ミラー』紙の記事



先日A. A. Gill氏のことを書いてから、あらためて英国の事が気になったのでネット上をつついてみた。面白い記事が出てきた。

英国『The Daily Mirror/デイリーミラー』紙による記事

As the 40 most British traits are revealed, how many of them do you recognise in yourself?

40の最も英国人らしい特徴が明らかにされました、いくつ心当たりがありますか?)

元記事はこちら
https://www.mirror.co.uk/news/weird-news/40-most-british-traits-revealed-7121978


記事は2016年の1月のもの。紅茶で有名な会社「Tetley」が行った調査…2000人の英国人から集めたデータを元に出来たリストだそうだ。これが面白い。これ、これですよ。この記事は2年前のものなのだけれど、英国に10年以上前に住んだ私にもこれは納得できる。そうそう英国人はこういう感じ。あの国の人々は10年以上が過ぎてもあまり変わっていないようだ。

面白いのでともかく記事を訳してみた。自分用のメモとしてここに記す。


40 MOST COMMON BRITISH TRAITS
40の最も英国人らしい特徴)
-----------------------------------------------------------------
1.Wearing summer clothing at the first sight of sun
(その年の)最初のお日様を見て夏服を着始める
2.Apologising automatically
考えもせずにごめんなさいを言う
3.Ability to talk at length about the weather
天気のことなら延々と喋れる技を持つ
4.Making a cup of tea in response to a crisis
危機に接するとまず紅茶をいれる
5.Finding queue-jumping the ultimate crime
行列の途中に割り込むのは極悪犯罪である
6.Forming a queue for pretty much anything
何事にも行列を作る
7.The typically British ‘stiff upper lip’
とても英国的な「動かさない上唇」(感情を表に出さない)
8.Grumbling throughout a meal, but not telling staff so as not to cause a fuss
(レストランでは)ぶつぶつ文句を言い続けるが、問題を起こしたくないのでウェイターに直接苦情を言うことはない
9.Making sarcastic/dry jokes
皮肉でドライな冗談を言う
10.Having a beer at the airport even though it’s before 8am
8時前にもかかわらず空港ではビールを飲む
11.Giggling at innuendos
(たぶん少しHな)風刺や当てこすりににやにやする
12.Making a cup of tea when you have no time to drink it
飲む時間もないのにとりあえず紅茶をいれる
13.Getting sunburnt on the first warm day of the year
その年の最初の暖かい日にひりひりするほど日焼けしようとする
14.Finding the American forwardness ‘a bit much’
アメリカ人の押しの強さを「ちょっとうんざり」だと思う
15.Avoiding eye contact on the tube
地下鉄の中では人と目を合わせない
16.Binge drinking at the weekends
週末に飲んだくれる
17.Insisting the other person goes through the door first
ドアでは人を先に通そうとする(お先にどうぞと言う)
18.Searching for a fry-up when on holiday abroad
休暇中に外国旅行をしていても英国式朝食(Full English Breakfast)を欲して探しまわる
19.Mistaking brightness for warmth
明るさを暖かさと勘違いする
20.Finding nothing better than a bacon sandwich
ベーコンサンドイッチ以上に美味いものはないと思う
21.Not asking for help so as not to ‘put anyone out’
人に迷惑をかけないように、人に助けを求めない
22.Insisting the barbecue will still go on despite rain
雨が降ってもバーベキューを決行しようとする
23.Bringing out fancy biscuits on a plate for visitors
お客さんにはお皿にのせたちょっといいクッキーを出してくる
24.Feeling extremely patriotic during sports events
スポーツの試合ではこれ以上ないほど愛国的だと感じる
25.Indulging in a pint and a packet of crisps
ビールとポテトチップをこよなく愛す
26.Reading newspapers in the morning
朝に新聞を読む
27.Feeling at home to the tune of EastEnders or Coronation Street
(長期連続TVドラマの)『イーストエンダーズ』と『コロネーション・ストリート』のテーマ曲を聴くとほっとする
28.Wearing extra layers rather than putting the heating on
(寒い時に)部屋のヒーターをつけるより厚着をしようとする
29.Feeling appreciative that the person in front put the ‘next customer’ barrier on the conveyor belt
(スーパーのレジの)ベルトコンベアーで「次のお客様」仕切り棒を置いてくれる前の人に感謝する
30.Doing anything possible for a light tan
ほんの少しの日焼けのために出来る限りの全てのことをやる
31.Owning a picnic hamper but only ever using it once a year
ピクニック用のバスケットを持っているが1年に1度しか使わない
32.Starting a controversial statement with ‘I’m not being funny, but...’
問題発言をする前に「変な事を言うつもりはないんですけどね」と前置きする
33.Being vague about your plans rather than decline an invitation
「招待」を断るよりも、自分のプランをうやむやにする
34.Thanking someone when you’ve done them a favour
人に親切にして同じ相手に感謝する
35.Not correcting someone when they pronounce your name wrong
名前を間違って発音されてもそれを正さない
36.Loving your cat/dog more than your child
猫と犬を自分の子供よりも可愛いがる
37.Searching your pockets when asked for spare change
(街で物乞いに)小銭を所望されてポケットの中を探る
38.Feeling extreme excitement over a Sunday roast dinner
「日曜のローストディナー」に大変わくわくする
39.Having mixed feelings towards the ill colleague who is still coming to work
病気なのに出勤してきた同僚に複雑な感情を抱く
40.Being skilled in writing a letter of complaint
苦情の手紙を書くのが上手い
-----------------------------------------------------------------


読み進むうちに何度もニヤニヤし、いくつかの項目では爆笑。そうですこれです!これが私がこのブログに何度か書いた「常識的」な英国人の姿…かなり当てはまっていると思う。個人的に最も印象的な英国人のイメージは「普段は親切で礼儀正しくどちらかといえば不器用でたぶん小心者なのに、サッカーの試合では別人に変身するオヤジ」かな。

上記のような人々は実際にいました…こういう習慣も目撃しました。
お呼ばれした雨の日のバーベキューパーティー(軒下で肉を焼いていた)。晴れの日に公園ですぐ上半身裸になる若者達。お皿の上に綺麗に並べられたクッキー。どの人も皆とりあえず紅茶をいれる。何時でもどこでも誰とでもとりあえず天気の話しをする。イタリアンレストランに行ってステーキしか頼まない知り合いのおじさん。日曜日ごとに(家族で)ローストした肉を食べたがり外国人の奥さんをうんざりさせる知り合いの旦那さん。神妙な顔で冗談ばかり言うハロッズの寝具売り場の店員のおじさん。地元チームのサッカーの試合で別人のように我を忘れて吼える隣人の弁護士のおじさん…おっとおじさんの逸話のほうが多いな。彼等はとても優しい紳士的な方々なんだけれど、なんだかとても不器用に見えるんですよ。好感度高いです。私は英国の普通のおじさん達を憎めない。

しかしこのような「遠慮がちの不器用な英国人気質」というのは、日本人もそれほど変わらないような気がするのだが…どうだろう? 和を乱すことを嫌う日本人には馴染み易いのではないだろうか。英国に住んでいた頃は私も事あるごとに「お天気の話」をし「Sorry」を繰り返してすっかり英国式に馴染んでいた。今もカンバーランド・ソーセージが恋しい。

記事の下にあるもう一つのリストもここに置いておこう


TOP 20 BRITISH ICONS
(英国の象徴トップ20
-----------------------------------------------------------------
1.Traditional Roast Dinner
伝統的ローストディナー
2.Fish and chips
フィッシュ&チップス
3.BBC (British Broadcasting Corporation)
英国放送協会
4.Union Jack
ユニオンジャック、国旗
5.Wimbledon
ウィンブルドン
6.A British cup of tea
英国式紅茶
7.The London Underground
ロンドンの地下鉄
8.The Royal Family
王室
9.Only Fools and Horses
BBCのドラマ『オンリー・フールズ・アンド・ホーセズ』(オリジナルは19811991年放送)
10.The Beatles
ビートルズ
11.NHS (National Health Service)
国民保健サービス
12.The City of London
ロンドン市
13.Buckingham Palace
バッキンガム宮殿
14.Red buses
ロンドンの赤いバス
15.Winston Churchill
ウィンストン・チャーチル
16.Queen
女王様
17.Queuing
列に並ぶこと
18.Cream tea
紅茶とスコーンにクロテッドクリームとジャム添え(アフタヌーンティの一種)
19.James Bond
ジェームス・ボンド
20.Stonehenge
ストーンヘンジ
-----------------------------------------------------------------
 
 
英国はこういうアンケートをとって、このように大変わかり易いリストが出来るのが面白いと思う。現在私の住むアメリカという国では、まずこういうリストは作れないだろうと思う。アメリカはとてつもなく広い国で、東西南北…それぞれ住む土地によって人々の気質も習慣も常識もあまりにも違うからだ。例えば東北のメイン州の人々と、南西のニューメキシコ州の人々は別の国といってもいいほど習慣も気質も違うのではないだろうか(よくは知らないが)。アメリカは「アメリカ人だから」ということを簡単には言えない特殊な国だと思う。
 
私は今住む土地を心から愛しているけれど、英国のことはやはり忘れられない。あの国に住んでいた時には色々と辛いこともあったと思うのだけれど、あまりよく覚えていない。思い出は綺麗な色に変わったのかもしれぬ。
 
 
 

2018年4月3日火曜日

A A ギル/A.A.Gill 氏



英国に関する覚え書き。

昨日は映画『The Death of Stalin』の感想を書いた。サブタイトルは「英国インテリの傲慢、侮蔑的視線」。また「…英国のメディアの記事の中には、どういうわけかよその国に関する論調に非常に趣味の悪いものも少なからず存在する」とも書いた。そして「…そういう論調の外国の旅行記などを英国人はエンタメとして喜んで読む。まぁたいていは無害な娯楽目的だから、そういうものを英国国内で消費するのは構わないと私個人的は思うけれど…。」とも書いた。

…その文章を書きながら私は「AA Gillよ、お前のことだはははは」などと笑っていた。


A. A. GillAdrian Anthony Gill氏とは、英国のレストラン/旅行/TV番組批評家…コラムニスト+時々作家。英国では大変著名なコラムニスト。英国の保守派の(とは言っても皆読んでいる)新聞『The Times』の日曜版『The Sunday Times』には彼の記事が毎週載っていて、英国に住んでいた当時は私もよく読んでいた。

その彼が2年前の12月に亡くなっていたのを昨夜初めて知った。映画の感想を書いた後で、思いついて彼の名前を検索したらメディアの記事が出てきて驚いた。

 奇しくも彼が亡くなる直前の2年前、私はたまたま彼についての記事の一部をネット上のどこかで読んでいた。そこには彼が癌を患っていること。そして長年の恋人と結婚しようとしていることが書いてあった。それから2年間、彼のことは思い出すこともなかった。


(昨日の映画の感想に書いた)英国のメディア記事の「…よその国に関する論調に非常に趣味の悪いもの…」とは、彼Gillさんの記事によるところが多い。彼のコラムのスタイルは何事にも文句文句文句…。 何事も批評/批判をすることが知性の源だとされている英国では、もちろん彼以外にも「辛辣な批評」を売りとするライターはいたと思うのだが、このGillさんの文章ほど批評の対象に対して辛辣で失礼で侮蔑的なものは他になかったと記憶している。

彼の『The Sunday Times』の旅行コラムも毎回読んでいた。昨日書いた「…そういう論調の外国の旅行記」というのも、主に彼の旅行記のこと。その記事をまとめた単行本AA Gill is Awayも本屋で手に取ったが、その中の日本の記事にムッとしたことは今でもよく覚えている(詳しい内容は覚えていない)。腹が立ったので結局本は買わなかった。(ちなみに…日本人は残酷…の記録は英国の小説『Bridget Jones's Diary』によるもの。Gillさんではない)。彼はそんな調子で、様々な国を訪れてはどの国もどの国も毎回辛辣にこき下ろしていた。

彼の毒舌はレストラン批評でも同様。そもそも最初にGill氏の名前を覚えたのは、彼と(アメリカでも有名な)セレブリティ・シェフGordon Ramsay氏の戦いの記事…「Ramsey氏が、彼のレストランにやってきたGill氏を店から追い出した事件」を、Gill氏は恨みを込めて『The Sunday Times』のレストランコラムに延々と文句と共に書き連ねていた。


彼の辛辣な文章は様々な人々から常に大きなリアクションを引き起こした。侮辱された国、土地、人々は、Gill氏と彼の記事を載せた新聞に苦情を訴える…そういうことは過去に何度もあったと聞く。彼の文章はドライなユーモアに溢れ、実際面白いのだが、色んな方角に噛み付いて、こき下ろし、偉そうに上から目線で批評・批判を繰り返す彼のコラムのスタイルを私は決して好きではなかった。嫌いだった。


中流階級の上の出身で、ハイソサエティの上澄みの中を優雅に(そのように見えた)浮遊するバッド・ボーイ。いいとこのボンボンがちょこちょこっと文を書けば、皆がすごいすごいと話題にする。結局パパが有名人(TVドキュメンタリーのプロデューサー)だから、ハイソな繋がりでお仕事ももらえたのかしら?ボンボンは人生も楽でいいですね…。

いい家に生まれて、頭も悪くない、ルックスもいい。美しい女性達は皆彼とお友達になりたがる。恋人は身長180㎝越え「ブロンド」の元モデル。レストランと旅行とテレビ番組のコラムを書けば有名ジャーナリストの出来上がり。そんな男が自分の生活の範囲外の文化や人間をゴミのようにこき下ろす。ポリコレなんて何処吹く風。(彼が本気かどうか実際は知らないが)彼の(彼のお眼鏡にかなわない)他者に対する傲慢さと辛辣さには戸惑うばかり。しかしこれほど名声と地位のある男が、なぜ外国の文化や、哀れな小レストランを上から目線でこきおろすのだろう???

平穏を尊ぶ気配りの国・日本で育ち、30歳を超えて英国に渡った私は、彼のような人物の英国での人気に本当に戸惑った。なぜ彼は許されるのだろう?


世の中には嫌なのに気になるもの…というものが存在する。不思議なことに私にとってのGill氏の文章は、嫌い…大嫌いだけど決して無視はできないもの。どこかで彼の文章にぶつかれば読まずにはいられない。「あいつまた何を書いてんだろう…嫌なイギリス野郎…ほんとに嫌だわ」。それでも彼の文章は気になってしょうがない。結局10年間いた英国で一番印象に残っているコラムニストは、あの憎らしいAA Gill氏その人ではないかとさえ思う。いったいどうしたものだろう。

不思議なことにそんな辛辣な彼の文章は英国中で愛されていた。
なぜ彼は愛されていたのか?


私には英国に関する持論がある。あの国を離れてもう10年以上が過ぎたが、未だに時々英国に関しては意見が言いたくなる。30代の10年間をどっぷり彼の地の文化に浸っていれば、たまに何か物が言いたくなるのはしょうがない。もしかしたらもう時候を過ぎて今は全く見当違いなものであるかもしれないけれど…。

私の中の英国の人々の印象は決して悪くない。私が個人的に出会った人々の印象は、一部の例外を除いて決して悪くはなかった。正直な話(米国人と結婚したのに)アメリカ人よりも英国人のほうが理解しやすいのではないかとさえ未だに思っている。このブログで過去に何度か繰り返している言葉「常識的」が私の英国人に対する一番の印象。

彼等は、基本的にはReserved(遠慮がちでおとなしく)Sensible(分別のある、思慮のある)人々で、己の無知を認識するIntelligence(知性)があり、Self-reflective(内省的で反省ばかりしていて)Apologetic(ごめんなさいをよく言う)で、Civilized(文明的で礼儀正しく)Patient(忍耐強い)そして弱い者にはKind(優しい)な人々…だと私は思っている(ちょっと褒めすぎか。ここでは短所には触れない)。そんな常識的な人達が、なぜあれほどに傲慢で侮蔑的なGill氏の文章を好むのか?

それが英国人の一筋縄ではいかないところ

私の勝手な想像だけれど…Gill氏とは、おそらく前述のような礼儀正しく内気な英国人にとって…彼らがなかなか言い出せない「本音」を遠慮なく代弁してくれるありがたい存在なのではないかと思いついた。いつも自分を抑えがちな英国の良識的人々…しかしそればかりでは息が詰まる。

「誰か私達の代わりに私達の本音を言ってくれないものだろうか?」

それがGill氏の人気の元なのではないか。彼だけではない。英国のメディアでもてはやされる有名人には、どこかワル、どこか型破り、ちょっと規格外、ちょっとだけ変な人…が多いようにも思うのは気のせいか。

普段から良識的であれと自らを律する英国人は、生な本音を公の場で大声で代弁してくれる変わり者を応援したがるのではないか。普段は温厚で真面目な英国人は、実はGill氏の辛辣な文章を読んで「良くぞ言ってくれた」と密かに気焔を上げていたのかも知れぬ。確かに自分が言えない言葉を誰かが言ってくれるのは気持ちがいい。そんな風にGill氏の文章はファンを広げていったのかもしれない。


昨日の文章の中で、そのような英国の偏見に満ちたメディアの文章関して「…まぁたいていは無害な娯楽目的だから、そういうものを(彼らが)英国国内で消費するのは構わない…」と書いたのも、そういうものは結局は常識的な英国人の「密かな鬱憤晴らし」の娯楽として読まれるだけだろうと思ったからだ。Gill氏は社会の矢面に立ちながらも、子供のように正直に「思った事をそのまま文章にして」人気コラムニストになった。ポリコレも無視。そんなものはどうでもいい。なぜなら彼の偏見に満ちた失礼極まりない文章は、英国人の「娯楽」として消費されるだけからだ。

もしかしたらGill氏は英国社会の道化師だったのかもしれぬ。

だから彼の文章はどんなに辛辣でも本質的には無害。例え彼がどんなに酷くドイツ人をこき下ろしたとしても、それを本気で受け取る英国人はあまりいないのだろう。「ああ確かにそうだよなぁはははひでぇなははは」と楽しんだらそこでお終い。全く無害。単なる娯楽でしかない。

そんなことを昨日Gill氏の死を知ってから考えた。英国を離れてもう10年以上も過ぎてから、初めて彼の人気の謎を納得できたような気がした(本当かどうかはわからない。たぶん違う)。


英国に住んでいた時、Gill氏のような存在は気になった。しかし彼のような華やかな人物は(ロンドンの片隅にひっそりと住む)アジア人の私からは、一番遠い所に住む別世界の人に見えていた。英国の富と地位と名声の全てを手中に収めた彼のような男は、決して私達マイノリティの方を向いてくれることはない。そしてその男は、いじめっ子のように意地悪で辛辣に弱い者をこきおろす。私達が絶対に手の届かないModern British establishmentの世界に遊ぶ子供のような男。彼とお知り合いになることも、お友達になることも決してできない。英国では、彼のようにハンサムで知的で魅力的で傲慢で自分勝手な男(女も)が(私達下々の者の手が決して届くことの無い)ハイソサエティの上澄みの上を優雅に漂って笑っている。私達がたとえどんなに彼のような男に憧れても…彼の世界に住む人々は決してこちらを向いてはくれない。
…しばらく英国に住んでそれがわかった時は悲しかった。それが英国の「階級」というものなのかもしれないとも思った。彼の存在…彼のような傲慢な人物が人気者になる軽薄な英国を私はちょっと嫌いにもなった。

Gill氏のことは彼の文章以外何も知らないのに、どういうわけだか彼は私にとっての「決して手の届かない華やかな英国の象徴」のようになっていた。それと同時に彼のような人間と、彼の生きる華やかな世界を密かに羨む自分が嫌いにもなった。


その彼が2年前に亡くなっていた。


もう何年も彼の事を思い出すことはなかったのに、今とても悲しい。これはなんなのだろうかと思う。気になっていた男…憎むべき嫌な野郎…それなのに彼は魅力的で…しかし決して振り向いてはくれない男…転じて憎むべき敵……絶対に手の届かない世界……その人物がいつの間にか亡くなっていた。心に穴があいたようだ。

Gillさんには長生きして、75歳になっても85歳になっても辛辣で酷い傲慢なコラムを描き続けていて欲しかった。それを私は時々覗いて「まーた嫌なイギリス野郎が失礼なことをいいやがって…」と文句を言いたかった。…そう出来るものだろうと思っていた。

英国を離れてもう12年になる。もう今の英国は私の知る英国ではないのかもしれぬと思う。もう「英国とはこうだ」と私の知る英国を例えとして語ることも出来なくなるだろう。それでも思い出の中の英国はただ懐かしい…。

昔買ったGill氏の本、『The Angry Island: Hunting the English』を取り出してきて読み直そうか。以前腹を立てて買わなかった『AA Gill is Away』もアマゾンで注文しようかと思う。また読んでギリギリと苦虫を噛み潰したい。ああ懐かしい英国よ。

Gillさん、あなたには色んな意味で心を揺さぶられました。あなたのことを好きだったとは言えないけれど、あなたのことを忘れることはないと思う。英国の思い出はあなたの文章とともにある。
Gillさんご冥福をお祈りいたします。